無駄なく美味しく。開田本舗のベジタブルフレーク──ふりかける、やさい習慣

大阪の「開屋本舗」代表・開田さんが手がける「お野菜ふりかけ」は、わずか10gで約60g分の野菜が摂れる画期的な商品です。驚くべきことに、その原料には本来廃棄されてしまう規格外野菜が使われています。
一体どのような思いで、どのように作られているのでしょうか。
今回はシェフの無添つくりおきスタッフで管理栄養士の田島が実際に工場を訪問し、社長の開田さんにお話を伺いました。
▼笑顔が素敵な開屋本舗代表・開田さん
私たち「シェフの無添つくりおき」と開屋本舗さんとの出会いのきっかけは、「手軽に無駄なくお野菜を摂ってほしい」という共通の思いでした。
子どもも喜んで食べられるふりかけであれば、お野菜でも楽しんで食べてもらえるのではないか——そんな発想から、開屋本舗さんとのご縁が生まれました。
さらに、市販のふりかけには添加物を使用しているものが多く、無添加のものを探すのは意外と大変です。そんな中で出会った開屋本舗さんの取り組みは、まさに私たちが求めていたものでした。
「つくりおき」では、この商品をオリジナルパッケージで、開屋本舗さんに特別に作っていただいています。
たこ焼き屋から始まった、食品ロスとの闘い
開田さんの原点は、意外にもたこ焼き屋でした。「大阪では鉄板の上に並んでいないたこ焼きは『いらない』と言われる」というスピード命の厳しい世界で、常に焼きたてをすぐに提供するため、30分経ったものは販売しない徹底ぶり。
「まだ食べられるのに販売できないたこ焼きがもったいなくて…なんとかできないだろうかと考えていました」と開田さん。
フリーズドライやおせんべいなど、さまざまな加工法を試す中で出会ったのが、真空(減圧)フライヤー製法でした。しかし、最初は「石みたいなたこ焼き」ができてしまったそう。
▼こちらは現在販売されている「たこ焼きそのまんまお煎餅」
「もともとたこ焼き用の機械ではないので、独学で試行錯誤の連続でした。納得いくものができるまで、なんと5年もかかったんです」
その間、何度も挫折しそうになったという開田さん。製造業未経験からのスタートで、「最初は本当に何もわからなくて…でも『美味しい』『また買うね』っていうお客様の声が何よりの励みになったんです」と振り返ります。
「失敗を重ねる中で、ある時偶然に美味しい製法に出会えたんです。その瞬間の感動は今でも忘れられません」
偶然から生まれた「お野菜ふりかけ」の魅力
現在の主力商品「お野菜ふりかけ」は、実は偶然の産物でした。野菜チップスを作る過程で出る”割れ”や”小さすぎる”部分を「もったいない」と感じ、自家消費用に粉末状にしたところ、予想以上に美味しくできたのがきっかけです。
「真空フライ製法で作ると、野菜の水分が1/6まで飛ぶんです。つまり、10gのふりかけで約60g分の野菜が摂れる計算になります」
この凝縮効果により、野菜嫌いの子どもや食が細い高齢の方でも、自然と野菜を摂取できるのが最大の特徴。
また、真空フライ製法は、茹でたり焼いたりする通常の調理工程に比べ、栄養素の損失が少ないとも言われています。
実際、小さなお子さんを持つご家庭からの人気も高く、インスタフォロワー100万人を超えるインフルエンサーさんとのワークショップも開催されるなど、ファンの輪が広がっています。
「お客様から『子どもが野菜を食べてくれるようになった』『おじいちゃんが喜んで食べてる』という声をいただくと、本当に嬉しくて。商品を通じて家族の笑顔が増えるって、これ以上の幸せはないですね。」と開田さん。
妥協なき品質へのこだわり
取材をしていて、特に印象的だったのは、開田さんの品質に対する妥協のない姿勢でした。
「体調不良の中でOKしてしまったチョコレートがけの安納芋チップス、後日食べてみると納得できる味ではなく、20kg分を販売見送りにしたことがあります。美味しくないものは絶対に売りたくないんです」
納得できない商品は完成段階でも販売を止めてしまう徹底ぶり。(スタッフの皆様で仲良く食べているそうです)
「大手さんは毎回同じ味、同じ内容量でと要望されますが、規格外野菜を使っている以上、それは難しいんです。でも、その分お客様との距離は近い。今回はちょっと甘めですね、前回より香りが強いですねって、一緒に楽しんでくださる方とお付き合いしたいんです」
開田さんの商売に対する考え方が垣間見える瞬間でした。
正直、効率を考えたら大量生産・大量販売の方が楽です。でも、お客様の顔が見えないのは寂しい。開田さんが作ったものだからって言って買ってくださる方がいる限り、この信念は変えたくないですね。
「誰が作ったかわからないものより、開田さんが作ったものの方が安心って言ってくださるお客様が増えてきました。価格より信頼を重視してくださる方が確実に増えている。この変化は本当にありがたいですね」
規格外野菜の現実と課題
「規格外野菜っていっぱいあるんでしょ?安く手に入るんでしょ?」とよく聞かれます。けれども実際は全く違います。
農家さんから直接仕入れられる量は意外と少なく、送料や量の都合でJAさんや市場を通すことの方が多いのが現実です。しかも価格も決して安くはなく、入荷量も安定しません。
それでも私が規格外野菜にこだわるのは、たこ焼き屋をやっていた頃から大切にしてきた「もったいない精神」があるからです。まだ十分に食べられる野菜を無駄にしたくない。そして何より、その思いを共有してくださる農家さんとのつながりを大切にしたいからです。
淡路島の農家さんが「割れてるから」と玉ねぎを分けてくださったことがありました。農家さんは「どうせ捨てるものだから」とおっしゃるのですが、私にとっては宝物。『少しでも使ってもらえるなら』と信頼してくださるその気持ちに応えたい一心で、毎回全力で取り組んでいます。
今後は収穫のお手伝いに行く予定です。畑に足を運び、農家さんと一緒に汗を流すことで「現場を知らないと本当にいいものは作れない」という信念をかたちにしていきたい。
信頼関係があるからこそ、農家さんも安心して野菜を託してくれる。これは規模の小さな私たちだからこそ築ける強みだと思っています。
つながりが生み出す価値
開屋本舗の取り組みは、単なる規格外野菜の活用を超えた、「つながり」の価値創造の物語でした。
農家さんとのつながり、お客様とのつながり、そして商品を通じた家族のつながり。これらすべてが、開田さんの商品づくりの原動力になっています。
「『もったいない』だけでは事業は続きません。リピートされる味であることが前提。でも、それ以上に大切なのは、お客様との信頼関係なんです」
開田さんのこの言葉に、これからの時代の価値あるものづくりの本質が込められています。
効率性や規模の経済を追求する大量生産・大量消費の時代から、作り手の顔が見える、ストーリーのある商品が選ばれる時代へ。開屋本舗の挑戦は、まさにその象徴といえるでしょう。
「誰から買うか」が問われる時代だからこそ、開田さんのような作り手の存在がより一層輝いて見えるのです。
今回ご紹介したベジタブルフレークは「シェフの無添つくりおき」にて購入できます。
お惣菜と一緒に届く「ついデリ」にて購入できます。(大好評につき完売しておりましたが再入荷いたしました)
(編集後記)
今回のインタビュアー:田島
開田さんに実際にお会いしてまず感じたのは、その圧倒的なパワー!
話しているだけでこちらまで明るくなるような親しみやすさに、緊張もすぐにほどけ、とても話しやすい時間になりました。取材中も「今ちょうど新商品をつくっててね、あっ食べてみる?」と気さくに試食を差し出してくださる姿に、商品への強いこだわりはもちろんのこと、自然と人を惹きつける魅力を感じました。
私自身、ここ数年「何を買うか」だけでなく「誰から買うか」を考えて購入するようになりました。少し高くても、安心して身体にいいと思えるものを選びたい。そんな中で開田さんのような生産者さまの姿に触れると、商品に込められた想いや背景ごと大切にしたいと感じます。
管理栄養士として特に印象的だったのは、「真空フライ製法」で作られたお野菜ふりかけは、野菜ジュースなどではなかなか摂れない食物繊維を無駄なく、丸ごと摂ることができる点です。子どもに不足しがちなカルシウムや鉄分と同様に、実は食物繊維も意識して補いたい栄養素。こうした点からも、野菜嫌いの子どもや食の細い高齢の方にも自然に野菜を届けられる魅力を強く感じました。
工場見学のときも、製造したばかりの安納芋チップスを「できたてだから食べてみて!」と差し出してくださり、その温かさに心まで満たされました。