「私たちは、糀屋です」糀の力を信じて真摯に味噌づくりを 三重県・河村こうじ屋 河村幸信さん[生産者をめぐる #2]

シェフの無添つくりおきが素材や製法にこだわる理由。
それは、人の想いもいっしょに届けたいから。

もしかしたら効率はよくないかもしれない。
だけど、おいしくて栄養たっぷりな食事を安心して楽しんでもらいたい。

そのために、私たちにできることを精一杯、手間隙かけて作っています。
それが実現できるのも、ひとえに日々想いを込めて食材を作っている生産者の方々の支えがあるからこそ。

妥協を許さず、ほんものを追求して丁寧に作る。
研ぎ澄まされた職人の技が、想いや歴史を紡いでいく。

私たちと同じ想いで食に向き合う作り手は全国にたくさんいます。

今回は、三重県で三代にわたり麹を作り続ける『河村こうじ屋』の 三代目店主・河村幸信さんにお話を伺いました。

オリジナル味噌や、メニューにも使用している特製コチュジャンなどを作っていただいています。

「味噌屋でも醤油屋でもない、”糀屋”です」
そう語る河村さんの食づくりへのこだわりと想いを聞いてきました。

シェフの無添つくりおきでは「食材を選ぶ基準」として大切にしていることがあります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

シェフの無添つくりおき公式サイト

麹(こうじ)とは 何から作られる?

麹は、食材に麹菌を付着させて繁殖させたもの。

米を使うと「米麹」、麦を使うと「麦麹」と呼ばれます。
それらを使って発酵・熟成させてできるのが、味噌や醤油などの発酵食品なのです。数年前にブームとなり、今や気軽に手に入るようになった「塩麹」もその仲間。

ちなみに、米を使った麹のことを「糀」という字でも表現することがあります。
これは、麹菌の菌糸が米に付着する様子がまるで花が咲いたように見えることからできた漢字だそうです。

河村さんが作っている麹は、まさに”糀”。
しっかりと菌糸が伸びて白い花が咲いたようです。

麹菌は日本独自の「国菌」とされており、とてもデリケートなもの。
丁寧に手間を惜しまず育てることで、日本ならではの甘みと旨みのある発酵食品の”素”が生まれるのです。

木蓋でつくる”手作り”にこだわった力強い糀

1946年に創業した河村こうじ屋の最大の特長は、「麹蓋」と呼ばれる木蓋で作っているということ。
糀づくりに重要な湿度の調整がしやすい木の特性を生かす伝統と技にこだわった製法です。

この麹蓋を使うということが、”手作り”の証明。

人の手と目で見極める必要があるため非常に手間がかかりますが、木肌から適度な水分や空気が送り込まれることで一般のものと比べて麹菌の生育が良くなり、発酵能力の高い「力強い」糀ができるのだと店主の河村さんは語ります。

麹蓋に盛り付ける前に、麹菌をしっかりとお米一粒一粒につけていきます。このときにしっかりと麹菌が行き渡らないと糀にならないとのこと。
蒸したお米をほぐしながら職人が一気に作業する姿は、圧巻です!

糀の甘さと旨みをじっくり深める「手入れ」

しっかりと麹菌を付着させた米を麹蓋に盛り付けます。これを床(とこ)と呼び、麹室で一晩おきます。

ここで行うのが、手作りの所以である「手入れ」

室の中に入れて時間が経つと、麹菌の活動により最初30℃くらいだった床が翌朝には40~50℃にまで上がります。
熱くなりすぎると自身の熱で死滅してしまう恐れがあるため、薄くのばして冷ましてあげる必要があります。

その作業を手入れと呼び、どのタイミングで手入れを行うのかは熟練した職人の経験による見極めと、丁寧な手作業による感覚で決まります。

手入れ後、メーカーによっては24時間程度で完成というところもあるそうですが、河村こうじ屋では48時間にわたってじっくりと時間をかけて糀を育てるのが特徴。

かけた手間と時間の分だけ、麹菌の菌糸がしっかりと米に回ることで甘みがぐっと増すのだといいます。

また、味噌は糀と大豆、塩を混ぜ合わせたものを熟成させて出来上がりますが、その味を決めるのが糀。
糀の割合が多いほうが甘みのある味噌に仕上がると言われており、作っていただいている味噌は「大豆の2倍量」の糀を使用しているそうです。

大豆のふくよかな旨みが引き出され、口の中いっぱいに広がる豊かな甘みが楽しめます。

自然な甘さが際立つ甘酒でつくる、唯一無二の調味料

味噌の他に、米麴から作られた甘酒もあります。

米麴にお湯を加えて60℃の温度で保温すると、甘味料などを一切加えていないのにやさしい自然な甘さがじんわり染みわたる甘酒が完成します。
しっかり20時間程度保温することで、米麹の持つ糖化力だけで甘くなるのだとか。

そんな河村こうじ屋の甘酒と味噌を使って、特別に作っていただいているのがシェフの無添つくりおき特製コチュジャン。

市販のものは中国産唐辛子を使用したものしかなく、それならばオリジナルで作ろう!というのがきっかけでした。

甘酒と米味噌、韓国産唐辛子をオリジナルの配合で混ぜ合わせた甘酒コチュジャンは、甘酒の自然な甘みが絶妙で、お子さまでも食べられる仕上がりになっています。

河村さんの手によって丁寧に作られる糀から生まれた、シェフの無添つくりおきの味。
河村こうじ屋でも販売していない、完全オリジナルです。

これからも、無添加にこだわった商品づくりを

糀づくりのすべての工程において、添加物は使用していません。
もととなる麹菌から無添加にこだわり、添加物不使用で培養されているものだそうです。

「昔ながらの製法を受け継いでいる、それがすなわち保存料や添加物を使わないことにつながる」と河村さんは言います。

味噌も、アルコールなどの添加物を入れないことで手間やコストは正直かかりますが、添加することで若干味も変わってしまうので極力使用しないようにしています。
オリジナルの味噌や甘酒コチュジャンも、もちろん添加物を一切使用せずに作られています。

「すべての商品は糀がもととなっていますので、その糀がより美味しい味噌や甘酒になるよう、”しっかりと力のある糀”を私たちはこれからも作っていきたいです。
暑い日もあります。ですが麹菌は生き物なので、それと真摯に対話しながら麹菌が元気に育つような環境と手助けをしていきたいと思っています。」

そう語る河村さんのやわらかい笑顔は、糀のようにふんわり花が咲いたあたたかみとやさしさを纏っていました。

【河村こうじ屋】
〒519-3204 三重県北牟婁郡紀北町東長島2311-8
TEL:0597-47-1410
https://www.kouji-ya.net/

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