リスキリングとは?企業の取り組みと個人のリスキリング事例

まったなしのデジタル化によって、私たちの生活や仕事は急速に変化しています。企業でも本格的に業務にデジタル技術が導入され、リスキリングによるITスキルの高い人材育成が必要となっています。しかし、日本では人手・時間・コストがかかるという理由から、リスキリング制度に取り組む企業は多くありません。その結果、スキルアップの必要性を感じた個人のリスキリングが増えています。

この記事では、企業で取り組むリスキリングや個人で行うリスキリングの事例をご紹介しています。市場価値の高いスキルを身につけ、成長分野でのキャリアアップを目指しましょう。

リスキリングとは?

リスキリングとは、企業がデジタル分野での人材育成を目指して、社員に新しいスキルを習得する機会を提供し、身につけたスキルを新しい仕事に活かすことです。

リスキリングに精通している、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤 宗明氏は、著書の中でこのようにリスキリングを定義しています。

リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」

-新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】 後藤 宗明 著

 

日本では、コロナ禍をきっかけとして急速にデジタル化が進みました。企業にとって、このデジタル化に対応できる人材の育成が急務となっています。しかし、リスキリングが重要視されつつも、導入する体制が整わない企業も多く、一気に進んだデジタル化に追いついていないのが現状です。

実際に、ビズリーチのアンケート調査によると、リスキリングに取り組んでいると回答した人が67.6%いるのに対し、勤めている会社を通じてのみ取り組んでいると答えた人の割合がわずか8.4%でした。(株式会社ビズリーチ調査2023.2

このアンケート結果から、新たなスキルを得たい社員は、企業を通してリスキリングに取り組むのではなく、個人でリスキリングをする人が多いことがわかります。

 

リスキリングが注目されている背景

リスキリングが注目されている背景には、AIやロボットなどの技術が浸透したことによる企業のDX推進にあります。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術をつかって、ビジネスの仕組みや生活スタイルを変革していく企業戦略のことです。

2018年に経済産業省が発表した資料によると「日本企業がデジタル化に取り組まなければ2025年~2030年にかけて年間12兆円もの経済的損失がでる」と予測されています。(経済産業省

企業のDX推進により、今後さらにデジタル分野での仕事が増加するでしょう。それと同時に、アナログな仕事の中には、失業する仕事も増えると予測できます。岸田首相は、その解決策として「成長分野に移動するための学び直し(リスキリング)に対する公的支援を、5年間で1兆円に拡充する」と説いています。

リスキリングが注目されている背景には、こういった社会の変化や、企業のDX推進によるビジネススタイルの変化があります。デジタル化に対応できるスキルをもった人材の確保が、企業の成長に不可欠となるでしょう。

 

リスキリングとリカレント教育のちがい

リスキリングと類似した言葉で使われるリカレント教育。日本においてのリカレント教育とは、個人が主体となって、仕事に必要な専門性の高い知識やスキルを身につける学び直しのことです。新しいスキルは社内で活かすだけではなく、キャリアアップ転職を視野に入れて、習得することも少なくありません。

一方でリスキリングは、主体となるのが企業であり、業務の一環として新しいスキルを身につける機会が提供されます。学んだあとは、企業内の部署移動などにより、身につけたスキルを活かして働きます。

リカレント教育は、もともとは欧米で「就労と復学を繰り返しおこなう」という意味で使われてきました。社会人として働いたあと、仕事を退職して大学などに復学します。そして専門性を磨いたり興味がある分野を学んだりして、再び専門性を活かした新しい仕事に就きます。

一度退職をして復学するという点において、日本のリカレント教育とは少し意味合いが異なるでしょう。

 

個人でリスキリングをしてスキルをつける

 

リスキリングへの取り組みは、国の政策として行われてはいるものの、まだ導入できていない企業はたくさんあります。とくに中小企業においては、人手や時間・コスト面からリスキリングの制度を導入するのは容易ではありません。

しかし、さまざまな仕事でITスキルを必要とする業務は多く、その必要性から個人でリスキリングに取り組む人も増えています。

 

個人がリスキリングするメリット

個人でリスキリングに取り組むことで、次のようなメリットがあります。

  1. ① スキルアップで仕事の幅が広がる
  2. ② 社内での昇給が見込める
  3. ③ キャリアアップ転職がしやすくなる
  4. ④ 市場価値を高めることができる

新しいスキルを身につけると、仕事の幅が広がり、社内でのさまざまな業務に取り組む機会が得られます。それにより、部署での評価が上がり、昇給・昇格につながるかもしれません。また、専門性の高いスキルが身につくことで、市場価値が高まり、キャリアアップ転職がしやすくなります。

 

何を学ぶ?市場価値の高いスキルとは?

専門性の高いITスキルをもった人材は市場価値が高く、デジタル分野でのスキルの習得をすることでキャリアアップが見込めます。

市場価値の高いスキルには次のようなものがあります。

  • ・プログラミング言語の習得(エンジニア)
  • ・インサイドセールスやデジタルマーケティング(営業・事業開発)
  • ・データ解析・分析スキル(営業・事業開発)
  • ・プロジェクトマネジメント(プロジェクトの責任者)

これらのスキルはオンラインで学べる、個人でのリスキリングにもおすすめのスキルです。

 

リスキリングを実践する方法

 

政府の支援事業を活用してリスキリングすると、受講料の負担が軽減できます。ここでは、支援内容や受けられるサービスについて解説します。

① リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)

事業に参画している補助事業者から、次のサービスを一連の流れとして受けられます。

・キャリア相談(無料)

・リスキリング(費用の負担を軽減)

・転職支援(無料)

 

支援内容

補助事業者につぎの金額が補助されることで、受講者は負担が軽減された価格で受講できます。(受講者への給付ではありません)

  • リスキリング講座の受講を修了:受講費用(税別)の 1/2 相当額、上限40万円
  • リスキリング講座の受講後、実際に転職をして1年間転職先に就業している場合:
    追加的に受講費用(税別)の 1/5 相当額、上限16万円

 

サービス・講座の内容

受講できる講座には、

・未経験からWebエンジニア

・未経験から技術者(CAD・BIMオペレーター、BIM技術者など)

・介護職の資格取得、ベンチャー企業への転職

などがあります。

 

② 教育訓練給付制度(厚生労働省)

教育訓練給付制度とは、主体的なスキルアップやキャリア形成を支援する給付制度です。厚生労働大臣が定めた教育訓練を修了すると、受講費用の一部が支給されます。

対象講座

対象となる教育訓練は約15,000講座あり、次の3種類に分かれています。

教育訓練の種類と給付率 対象講座(例)
専門実践教育訓練

受講費用の70%(最大)

年間上限56万円

を受講者に支給

業務独占資格などの取得を目指す講座

介護福祉士、看護師、准看護師、保育士など


デジタル関係の講座

ITSSレベル3相当以上のIT関係資格取得講座

第四次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定)


大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程

専門職大学院の課程(MBA、法科大学院など)

職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定)


専門学校の課程

職業実践専門課程(文部科学大臣認定)

キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定)

特定一般教育訓練

受講費用の40%

上限20万円

を受講者に支給

業務独占資格などの取得を目指す講座

介護支援専門医実務研修、大型自動車第一種・第二種免許など


デジタル関係の講座

ITSSレベル2相当以上の情報通信資格の取得を目指す講座など

一般教育訓練

受講費用の20%

上限10万円

を受講者に支給

資格の取得を目指す講座

介護福祉士実務者養成研修、税理士、社労保険労務士、Webクリエーター、宅地建物取引士など


大学院などの課程

修士・博士の学位などの取得を目指す課程

給付条件

教育訓練給付を受けるにあたり、雇用保険の加入期間などの条件を満たす必要があります。

(パート・アルバイト・派遣労働者の方も対象)次の1~3の条件に該当すると給付が受けられます。

  1. 1. 受講開始日時点で在職中、雇用保険に加入している、または離職して1年以内
  2. 2. 今までに教育訓練給付を受けたことがない
    または前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上
    且つ、前回の支給日から今回の受講開始までに3年以上経過
  3. 3. 雇用保険の加入期間が1年以上(専門実践教育訓練の受講は2年以上)

くわしくは、管轄のハローワークにご相談ください。

全国のハローワーク

 

給付手続き

専門実践教育訓練 / 特定一般教育訓練

① ハローワークやキャリア形成・学び直し支援センターにてキャリアコンサルティングを受けます。

② 受講開始日の1ヶ月前までに管轄のハローワークで受給資格確認をする。

③ 講座の受講・修了。

④ 修了日の翌日から1ヶ月以内に管轄のハローワークで支給申請をします。

 

一般教育訓練

① 講座の受講・修了

② 修了日の翌日から1ヶ月以内に管轄のハローワークで支給申請をします。

 

リスキリングにおすすめの講座・オンラインスクール

個人で手軽にオンラインでリスキリングができる講座です。

Grow with Google

受講者が1,000万人を超えたGoogleによるキャリアアップのサービスです。リスキリングの取り組みとして、Googleが発起人となり官民連携をしたスキルアップのプログラムを提供しています。

日本リスキリングコンソーシアム

 

LinkedInラーニング

21,900件以上のコースから選択できて毎週新しいコンテンツが追加されます。世界200か国、8億5,000万人を超えるメンバーが登録し、情報の交換・取得をしています。サブスク型サービス、1か月間無料トライアルあり。

 

Udemy

210,000件以上もの動画コースから選択できます。学びたいスキルの動画を購入するサービスです。

 

コーセラ(coursera)

世界クラスの大学、企業のオンラインコースが誰でもどこからでも受講できます。グローバルなオンライン学習のプラットフォームです。サブスク型サービスと無料の講座があります。

 

まとめ

リスキリングが注目される中、企業内での学び直しだけではなく、個人でリスキリングをする人が増えています。政府の給付金による支援も充実しているため、積極的に活用してスキルアップができるといいですね。また、オンラインで提供されている講座にも、無料や低価格で受講できるものも多数あります。ぜひ目的に合った講座を探してみてください。

数年後の成長分野への労働移動を見据え、新たなキャリアプランを考えて必要なスキルを今から身につけておきましょう。

 

 

参考サイト:https://www.works-i.com/sp/reskilling/(リクルートワークス研究所)

https://www.hrpro.co.jp/miraii/(ミライイ)

 

 

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