「ふつう」を究める伝統の豆腐づくり 富山県・ねこのくら工房 宮脇廣さん[生産者をめぐる #3]

シェフの無添つくりおきが素材や製法にこだわる理由。
それは、人の想いもいっしょに届けたいから。

「もしかしたら効率はよくないかもしれない。だけど、おいしくて栄養たっぷりな食事を安心して楽しんでもらいたい」

そのために、私たちにできることを精一杯、手間隙かけて作っています。
それが実現できるのも、ひとえに日々想いを込めて食材を作っている生産者の方々の支えがあるからこそ。

妥協を許さず、ほんものを追求して丁寧に作る。
研ぎ澄まされた職人の技が、想いや歴史を紡いでいく。

私たちと同じ想いで食に向き合う作り手は全国にたくさんいます。

今回ご紹介するのは、富山県南砺市で豆腐を作っている『ねこのくら工房』。
世界文化遺産・五箇山の地で、”ふつう”であることにこだわり抜いて作っている豆腐やさんです。
一般的な豆腐と何が違うのか、店主の宮脇廣さんにお話を伺いました。

 

 

世界遺産の地・五箇山に伝わる「堅豆腐」

日本百名山の一つである「白山」。その北東側に位置するのが富山県南砺市、五箇山地区です。
富山市内から車を走らせることおよそ2時間。世界遺産にも認定された、美しくも趣のある合掌造りが出迎えてくれました。

この五箇山地方に昔から伝わるのが「堅豆腐」。

その名の通り、ぎゅぎゅっと中身も旨みも詰まったしっかりと弾力のある豆腐です。
五箇山は山深い豪雪地帯のため、持ち運びに便利なように荒縄で縛ってもくずれないほど堅い豆腐が作られていたことがその由来とされています。

突然ですが、豆腐って何から作られているかご存知ですか?

「大豆・水・にがり」

そうなんです、皆さんの想像通りとてもシンプルな材料と工程で作られています。

なめらかな絹ごし、しっかり食べ応えのある木綿、濃厚な口触りのざる豆腐。 いろんな種類がありますが、市販で売られている豆腐のパッケージを見てみると、意外にも上記以外の材料も入っていたりします。

では、どこで違いが生まれるのか。
それは、「シンプルに素材を生かし、その分たっぷりと手をかける」作り方かどうか。

効率化、大量生産など人間の都合を度外視してでも守ってきた丁寧な食事づくりが、「ねこのくら工房」にはありました。

【取材動画はこちら】

 

故郷の文化と伝統、豆腐づくりとの出会い

「子どもがアトピーで、口にするものの影響が大きいと気づいてからは極力食材や作り方にも気を配るようになりました」と柔和な表情で語るのは、店主の宮脇廣さん。

食事作りのキホンは、「大切な人が健やかで、笑顔で過ごせる」ということ。

元々木工業を営んでいた宮脇さんですが、豆腐づくりを始めたのは今から15年程前のことです。
「地元五箇山で、何か新しいことをはじめたい」
そう考えたときに、頭に浮かんだのが豆腐作りだといいます。

この地には、古くから豆腐づくりの文化が根付いていました。自身が幼いころから慣れ親しんできた堅豆腐には、故郷の文化と伝統がぎゅっと詰まっています。
そんな五箇山の堅豆腐ですが、昔から営んでいる豆腐店が数件あるだけで、つくり手の人口が減少し衰退の一途をたどっていたのが実情でした。

宮脇さんが豆腐作りを始めるきっかけになったのが「環境」。 豊かな自然が育む大豆や水が豆腐づくりに適した環境だったことに加え、ともに働いていた木工職人の中に家業で豆腐づくりをされていた方がいたことも大きなきっかけでした。

豆腐作りの経験がなかった宮脇さんはその方に豆腐作りの基本を教わり、「五箇山ならではの伝統と味を受け継いでいきたい」という想いが強くなりました。
それからは、様々な豆腐の作り手の元へ修行へ行き経験を積んでいったといいます。

減っていく一方のところにあえて飛び込んだ宮脇さん。
そのバイタリティーと覚悟は、堅豆腐のようにその想いをぎゅっと強固にしていったのです。

五箇山の魅力がぎゅぎゅっとつまった美味しさを

堅豆腐のぎゅっと詰まった旨みを最もダイレクトに感じられる、刺身でいただくことに。
口に入れた瞬間、「豆腐って、こんなに味が濃い食べ物だった?」と驚くばかり。
五箇山の堅豆腐は、おそらく皆さんが想像しているよりもはるかに”主役”な味わいです。

そんなしっかり味の濃い豆腐ですが、さらに驚くべきは、口に含むと思わずほっこりするふわっとした軽やかさ。厚揚げにしても、このふわふわとした食感のおかげでいくらでも食べられそうです。
堅豆腐自身の味がしっかりしていることも飽きない理由の一つではないかと感じました。

味の濃さと軽やかさ。
これがどんな料理にも合い、さらに自身も主役になれる存在感を生み出しています。

ねこのくら工房の豆腐に使われているのは、100%富山県産の大豆。
しかも、80%ほどは地元・南砺市産といいます。
富山県の食品研究所によると、エンレイという大豆の品種は元々たんぱく質が豊富に含まれており豆腐に向いていること、さらにその土地の水と土壌が大豆づくりに適しているということが大きいようです。

昔から当たり前に行われてきた地産地消の精神は、現代でも非常に理にかなっており、それが五箇山の伝統と文化を支える礎となっています。

大豆もさることながら、豆腐作りのキモとも言えるのが「水」です。
たかが水、されど水。 五箇山の堅豆腐が、他と異なる旨みを放つ理由とはなんでしょうか。

それは、この土地特有の水質にあります。
お話によると、他の地域に比べて石灰質が多く含まれており、そのことが堅豆腐をより美味しくする要素になっているのではないかといいます。 そうした水質と歴史を持つ五箇山の地であるからこそ、堅豆腐が昔から根付いている大きな理由の一つと言えそうです。

最適な素材や環境はもちろん、特別なことはしない、”ふつう”の作り方であること。
素材のもつ力を最大限に引き出し、ねこのくら工房の堅豆腐を作り上げています。

「豆腐作りはシンプル。だからこそごまかしがきかないので、”ふつう”のことを当たり前にやるだけ」と宮脇さんは語ります。
その表情から、五箇山の地への畏敬の念、豆腐づくりへの真摯な想いが伝わってきました。

ねこのくら工房だからこそできた、”ふつう”であること

豆腐を作る工程の中でどうしても避けられないのが「泡」。
泡がたくさんある状態で固めてしまうと、ぽこぽこと穴のあいたスポンジのような豆腐になってしまいます。

手作業で丁寧に泡を取り除くのは多くの手間と時間がかかります。
そのため、大手メーカーなどでは一般的に「消泡剤」と呼ばれる食品添加物を加えて泡を短時間で消しています。ですが、消泡剤は基本的に加工中に消滅または残存していてもごく微量であるため、加工助剤として扱われ、表示が免除されています。
これはキャリーオーバーと呼ばれており、原材料の表示を見てもわからないのが現実。

シェフの無添つくりおきは、「カラダに不要な成分は極力使用しない」という考えのもと食事作りを行っています。
その中で、豆腐業界ではある意味”当たり前”とされてきた「消泡剤」すら使わずに作っているところはないのか、全国を探し回りました。

数多くの豆腐メーカーに問い合わせて確認しても、消泡剤を使っていないものはなかなか見つかりませんでしたが、それでも私たちと同じ想いで丁寧に食と向き合っているつくり手は必ずいるはず。
そう信じて諦めずに探し続けた結果、出会ったのが「ねこのくら工房」の宮脇さんでした。

「ふつう=基本に忠実」なのだけれども、これが実は一番難しい。

「ふつうや当たり前だと思ってやってきたことが、実は当たり前ではないのかもしれない。でも、覚悟をもってこの世界に飛び込んだときから、それを続けていこうと」

そう語る宮脇さんの想いが、シェフの無添つくりおきとリンクする感覚が広がっていきました。

「当たり前」という言葉の反対は「有難い」。
この土地が育んだ食材、水、環境、そしてつくり手の食に対する愛情が作り出す豆腐は、今の時代に改めてその存在を味わいたい、そんな有難さがあふれています。

「皆さまのもとに、この濃い味わいをもっとお届けしたい!」 その想いがより深まった五箇山への旅でした。

「シェフの無添つくりおき」で味わえます

「ねこのくら工房」の豆腐や厚揚げは、『シェフの無添つくりおき』で使用しています。
つくりたての美味しさをそのまま冷蔵でお届けするサービスですが、冷凍よりも冷蔵のほうがこの美味しさをダイレクトに味わっていただけると考えています。

ぜひ、ねこのくら工房×シェフの無添つくりおきのこだわりメニューをお楽しみください!

【ねこのくら工房】
〒939-1923 富山県南砺市下梨207
TEL:0763-66-2678
http://nekonokura.com/

 

シェフの無添つくりおき公式サイト