保育園栄養士が考える、子どもの少食・偏食が変わるきっかけ

子どもが思うように食べてくれない、あるいは、決まったものばかり食べたがるので困っている方は多いと思います。

保育園でも、利用者の方から
「園では食べるのに、うちでは食べてくれないんです」
「子どもが偏食なのですが、どうしたら食べるようになるんですか?」
といったご相談を受けることがあります。

家と保育園、それぞれでの過ごし方には、いくつかの違いがあり、そこに子どもが自分から食べたい!と思えるきっかけやエネルギーのもとが隠れているように思います。

ここでは、次の5つの要素に着目し、家庭と保育園それぞれの特徴を見ていきます。
そして、意欲的に食べる子どもを育むために、大切になると思うポイントをまとめてみました。

 

 

その1.生活リズム

家は、家事や在宅ワーク、家族の通院や送迎など、日々やることがたくさんありますよね。
さらに子どもが小さかったり、家族が多かったりすると、物事が予定通りにはなかなか進まなくなってしまうでしょう。

一方保育園では、毎日の過ごし方が決まっています。午前中は、園庭で遊んだり、外へお散歩に行ったりして体を動かします。その後お部屋で昼食、お昼寝で体を安めたら、おやつを食べて、午後の活動に取り組みます。

子どもたちの生活リズムが整うと食事がスムーズになることが多いです。
特に午前中はよく遊ぶようにすることで、お腹が空きやすくなり、食後の睡眠も取りやすくなっています。

試してみよう:規則的な生活リズムを作る

すでに実践されている方もいらっしゃると思いますが、朝の起床、朝食の時間を一定にして、できるだけ午前中に体を動かす遊びをさせてあげましょう。

外へ連れて行けなくても大丈夫!家の中でもできる運動はあります。

例えば、布団でお山を作って、その上を四つんばいで上り下りする遊び。これは全身を使う運動で、バランス感覚も養われるので、ハイハイの時期を過ぎた子どもにもいいですよ!

その2.人と一緒に食べる

家族の生活リズムが違うと、みんなで一緒に食べることは難しいですよね。実際、子どものお世話が大変だから、先に子どもだけ食べさせている方は多いようです。

一方保育園では、毎日クラスメイトや先生と食卓を囲みます。そこで友達が美味しそうに頬張る姿、苦手な物に挑戦する姿を見ることで、自分もやってみよう!という気もちが起こりやすくなっています。

また、自分よりも上手に道具や食器の扱っている様子は、挑戦心をかきたてる刺激になります。

子どもたちは、仲間と食卓を囲み、周りの反応を見ながら、食べる力を育んでいます。同時に、人と一緒に食べるって楽しいんだ!ということを体感していきます。

試してみよう:子どもと一緒に食べよう

できるだけ、子ども一人で食べさせようとせず、一緒に食べましょう。全部が難しかったら、一部だけでも。

子どもと向かい合わせに座り、食べている様子を見せられるとより良いです。

その3.食事に集中しやすい環境を作る

家庭では、食卓からテレビが見やすい位置に置かれていたり、すぐ近くにおもちゃのスペースがあったりするかもしれません。

保育園では、活動によって空間を分けているところが多く、食事スペースに余計な刺激が入らないように配慮されています。

遊び、食事、睡眠、それぞれの活動ごとに環境が整っていると、子どもは気を削がれることなく、その活動に集中できるようになります。

試してみよう:子どもが食事に集中できるよう、食卓周りの環境を整える

テレビやおもちゃなどは、子どもの座る席から見えない場所にセットしましょう。子どもが食事に集中できるよう、食卓では注意を引く物が視界に入らないようにしましょう。

その4.食べるときの子どもの様子と、声がけ

子どもが思うように食べてくれないと、「どうして食べないの?」「一口でもいいから食べて!」と声をかけたくなりますよね。でももしかすると、その声がけがプレッシャーになってしまっているかもしれません。

保育園では、出した食べ物に手を付けなかったとしても、ネガティブな言葉はかけないようにしています。

今の様子をよく見て、できたことに対してポジティブな言葉をかけると、子ども自身が今できたことを自覚しやすくなり、次のステップにも進みやすくなります。

例えば、ほうれん草を避けている子が、手でつかんだら「つかめたね!」、口に持っていったら「口に運べたね!」といった具合です。

いきなり一口食べることを求めると、子どもにはハードルが高すぎてしまいます。その子が今できる小さなステップを認めて、言葉にして伝えることが大切です。

試してみよう:子どもの「できた」が生まれやすい声がけをする

「どんなにおいがするかな?」と問いかけてみて、においをかげたら「においをかげたね!」、「触るとどんな感じがする?」と問いかけてみて、触れたら「触れたね!」というように、小さいステップに誘導して、それができたら、できたことを言葉にして伝えましょう

もしできなかったとしても、がっかりしないで、また次の機会に仕切り直しましょう。

その5.食に関わる機会

食事は、お皿が出てきたときから始まるのではありません。料理する前から始まっています。

私たちにとって、どこで作られたかわからない野菜と、おばあちゃんが作った野菜は、全く別の物になります。どこから来たのか、どのように作られたのかを知ることで、その食べ物に親しみやすくなります。

家庭では、子どもに食べさせることで精一杯になりがちだと思いますが、保育園では、子どもたちが食材に触れたり、学んだりする機会を作るところが増えています。

ちょうど先日、保育園の園児に、給食で使う食材の下ごしらえを手伝ってもらう活動をしました。野菜を手でちぎったり、かつおぶしを手で細かく潰したりする作業をお願いしたところ、夢中で取り組んでいました。
そうして、いつもなら和え物の野菜に手が伸びない子も、その日のおかか和えは最初に全部食べきっていました。

試してみよう:食に関わる機会を意識して作る

ゆとりのあるときに、玉ねぎの皮むきやゴマすりなど、子どもでもできる作業をやってもらいましょう。

お店に行って、子どもに食材選びを一緒にしてもらうのも◎です。例えば、「今日の夕飯に使うブロッコリー、どこにあるかな?」と売り場を探してもらったり、「どれが良さそう?」と、形や色、大きさなどを見ながら選んでもらったりします。

まずは食材に興味を持つこと。それが苦手な物にも挑戦してみたくなる、大切なステップだと思います。

まとめ

保育園では、毎日の生活の中で、子どもたちが自ら食べたい!と思えるような仕組みを用意しています。

うまくいかないこともありますが、可能な範囲でご家庭でも試してみてください。

ただ、パパやママが疲れていたり、焦っていたりすると、うまくいかなくなってしまうので、心身ともにゆとりがある時を選んでくださいね。

食に関わる活動は、親子ともに楽しく!が一番です。

 


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